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波と手紙

小田桐 夕のブログ。塔短歌会に所属しています。         ゆふぐれはあなたのなかに沈みゆくとほき国だと気づいてしまふ

光森 裕樹 『鈴を産むひばり』

鈴を産むひばり 作者: 光森裕樹 出版社/メーカー: 港の人 発売日: 2010/08/11 メディア: 単行本 購入: 3人 クリック: 39回 この商品を含むブログ (9件) を見る 光森裕樹さんの歌集はすでに第3歌集まででているので順に取り上げてみましょう。 『鈴を産むひば…

山下 洋 『たこやき』

塔の選者の短歌にはそれぞれの持ち味がよく出ています。山下さんの短歌は、力の抜けた感じや面白さがあります。『たこやき』は第一歌集で、当時からすでにおかしみやユーモアのある歌も収められています。 最近の山下さんの短歌はこんな感じ。 なあ鳶よ埋め…

柏崎 驍二 『北窓集』

風ありて雪のおもてをとぶ雪のさりさりと妻が林檎を剥けり (*剥くで代用) 『北窓集』の巻頭におかれている一首です。「風ありて雪のおもてをとぶ雪の」が「さりさりと」を導く序詞になっています。外を舞う雪の様子から、室内で林檎を剥いている様子につな…

大井学 『サンクチュアリ』

大井学さんの第一歌集を取り上げてみましょう。なかなか難しい歌集で、読んでからしばらく置いていました。私ではうまく読めない歌もいろいろあるので、読みのうまい人の意見を聞いてみたかったな。 大井さんの短歌を今回まとめて読んでみて、現代の生活をと…

𠮷野 裕之 『砂丘の魚』

今回は『砂丘の魚』を取り上げてみましょう。平易な語彙でかかれているのに、なんとなくつかみどころのない世界が広がっています。 あまり具体的なことに焦点を絞らずに、むしろ広がりがあるのが特徴かな、と思いつつ読んでいきました。 ■目の前の光景とかす…

紀野 恵 『La Vacanza』

幻想的で美しい雰囲気を持つ紀野恵さんの短歌の世界はとても惹かれます。 『La Vacanza』は表紙をひらくと、トランクのイラストがあります。歌集タイトルから察することができるように休暇をイメージした世界が広がっています。 単に違うエリアや国に行くの…

永田淳 『湖をさがす』

今回は短歌日記2011でもある『湖をさがす』を取り上げてみましょう。前年の2010年に母親である河野裕子さんがなくなっているので随所に河野さんを回想する歌が見られます。 ■植物を詠んだ歌 酸茎菜の厚らなる葉に雫ありひとつひとつの曲面に雲 *酸茎=すぐ…

大辻󠄀隆弘 『大辻󠄀隆弘集』

今回は大辻󠄀隆弘氏の初期歌集をまとめた『大辻󠄀隆弘集』を取り上げましょう。 ■植物とそこから広がるイメージ あぢさゐにさびしき紺をそそぎゐる直立の雨、そのかぐはしさ ゆふがほは寂しき白をほどきゐつ夕闇緊むるそのひとところ *寂しき=しづけき 幹つ…

横山 未来子 『午後の蝶』

今回は『午後の蝶』を取り上げてみます。ふらんす堂の短歌日記2014をまとめた本です。装丁やサイズがかわいくて、このシリーズは大好きです。 ■小さなものへの視点 わが影のかぶされるとき三匹の冬の金魚のとろりと浮き来 愛づるのみにてつかはぬ硯あるとい…

松村正直 「駅へ」

松村正直氏の第一歌集です。だいぶ前の歌集で、今更読む機会があると思っていなかったので、今回きちんと読めてとても嬉しかった。最近の松村さんの歌風を結社誌や総合誌で知っているので初期の歌風を見ていると不思議な気もします。(全体的にね・・・・若…

千種 創一 「砂丘律」

「中東短歌」という同人誌のなかの短歌のいくつかが数年前にツイッターでよく流れてました。そのときに千種さんの名前を覚えました。 「中東短歌」をはじめこれまでの作品をおさめた「砂丘律」、装丁のこだわりも話題になっていますね。ペーパーバックみたい…

真中 朋久 「火光」

今回は真中さんの「火光」を取り上げてみましょう。何度読んでもなかなか難解で、手ごわい歌集です。全体的に読者からの安易な理解とか共感といったものを最初から拒否しているような雰囲気を持っています。 ■死や滅びを意識した歌 わが裡にほろびゆくものほ…

中津 昌子 「むかれなかった林檎のために」

今回は中津昌子さんの「むかれなかった林檎のために」を取り上げてみます。この歌集、装丁がすごくきれいなんです。紺色の表紙に金色のプレートみたいなタイトルがついています。品があって好きですね。 ■植物に託した歌 つよい国でなくてもいいと思うのだ …

大口 玲子 「大口玲子集」 

今回は大口玲子さんの「大口玲子集」を取り上げてみましょう。第一歌集「海量」の作品がメインで、すごく読み応えがありました。 ■日本語、言葉を詠んだ歌 名を呼ばれ「はい」と答ふる学生のそれぞれの母語の梢が匂ふ 日本語が日本を支ふる幻想のきりぎしに…

楠 誓英 「青昏抄」

今回は楠 誓英さんの「青昏抄」を取り上げてみましょう。前から買いたかったのですが、やっと入手・・・。 ■自己の内面を見つめる歌 言ひかけてやめたる吾と合歓の葉が閉ぢて下がれり夕闇の中 面接を終へて戻れる夜の道に脳の形に鶏頭ひらく 狂ふとは狂ふお…

横山未来子 「金の雨」

歌集 金の雨 作者: 横山未来子 出版社/メーカー: 短歌研究社 発売日: 2012/05/01 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る ゆっくり読んでいたら、次の歌集「午後の蝶」がでていますがな・・・。「金の雨」はもともとは30首連作として編まれた作品がベ…

真中朋久 「エフライムの岸」

今回は真中さんの第4歌集です。カバーのざらりとした質感が印象的。 ■死と死に至るまでの歌 生者死者いづれとも遠くへだたりてひとりの酒に動悸してをり 冬のグラスに色うつくしき酒をそそぎふるき死者あたらしき死者をとぶらふ 死の間際に受け入れる罪サン…

佐藤弓生 「モーヴ色のあめふる」

自分ではとても描けない幻想的な世界に惹かれることってありますね。今回は佐藤弓生さんの「モーヴ色のあめふる」を取り上げます。 ■なにかと接する面をとらえた歌 天は傘のやさしさにして傘の内いずこもモーヴ色のあめふる人は血で 本はインクで汚したらわ…

真中朋久 「重力」

今回は真中さんの第三歌集「重力」を取り上げてみます。 ■実直さがでている歌 直言をせぬは蔑するに近きこととかつて思ひき今もしか思ふ若きゆゑのみに言ひたることならずふかくかなしみてふたたびを言ふ諦念のむしろあまやかにふくらんで午後の酸素は吸ひが…

真中朋久 「エウラキロン」

今回は真中朋久氏の第二歌集、「エウラキロン」を取り上げてみます。 ■自然をかきとめた歌 くれなゐの八重のさくらの過剰とも思ひき遠ざけしままに過ぎたり あわただしく移る季節は窓のそとつながつたまますこし眠つた 浅きみづに背をひからせて真鯉ありき朝…

真中朋久 「雨裂」

最近、真中さんの歌集をずっと読んでいました。今回は第一歌集「雨裂」を取り上げてみます。 真中さんは気象予報士として働いていたそうで、短歌のなかに気象用語や天候にまつわる発想がでてくるのが面白く、また印象深いものが多かったです。実際の仕事の経…

ひぐらしひなつ 「きりんのうた。」

今回はひぐらしひなつさんの「きりんのうた。」を取り上げます。2003年に出版された歌集ですが、私が手に入れたのは数年前です。当時、繰り返し読んでいた1冊です。 いいかけで終わる歌 骨と骨つないでたどるゆるやかにともにこわれてゆく約束をコントラバス…

江戸雪 「江戸雪集」

今回は江戸雪さんの初期の作品をおさめた「江戸雪集」をとりあげます。 いつのまに信じられなくなったのかフロントガラスにとけるだけ 雪スカーフに風からませてどこへでも行けると思う今ならば でもひきだしの死角のようにいるひとを思い出せなくなるまで、…

松村正直 「午前3時を過ぎて」

今回取り上げるのは松村正直氏の「午前3時を過ぎて」です。以前とりあげた「やさしい鮫」から約8年、端正な文体がさらに深化したという印象です。 日常の歌 橋の上にすれ違うときなにゆえに美しきかな人のかたちは すれちがう人の多さが春である疎水のみずを…

松村正直 「やさしい鮫」

今回は松村正直氏の第二歌集「やさしい鮫」を取り上げてみます。わりと前の歌集ですが。全体を通じて大変に平明な言葉で詠まれいていながら、詩としての成立させるための要は静かに存在しているので丹念に追っていくと感情の変化を読み取れます。松村さんの…

林和清 「林和清集」

全体を通して読んでまず思うのが、内にもっている時間の軸の長さが通常のひととは違う、ということです。 京都という歴史のつみ重なった土地での暮らしと豊富な教養が、林和清氏の短歌の世界の土台になっています。自分が生きている現世という時間だけでなく…

横山未来子 「横山未来子集」

邑書林から出ているセレクション歌人というシリーズ、かなり前から愛読しています。今回はそのなかから「横山未来子集」を取り上げてみます。 とりどりの紅葉捉へて凍りたる湖のごとくに生き来しひとか霜月におもふ真夏の陽のごとくはるかなり眼をほそむる癖…