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波と手紙

小田桐 夕のブログ。塔短歌会に所属しています。         ゆふぐれはあなたのなかに沈みゆくとほき国だと気づいてしまふ

塔2017年2月号 5

若葉集から。 栞紐はさんでありしところより読み始めて馴染むまでのしばらく 高橋 ひろ子 P164 読書をはじめたときに、こんな感覚を覚えることはよくあります。「馴染むまでのしばらく」のあいだに前回までに読んでいた内容を思いだしていて読むスピードが上…

塔2017年2月号 4

作品2からもう少し。2月末は暖かかった。春は近い。 山積みの書類のやうにすることがあるがあなたよ夕陽をみないか 赤嶺 こころ P112 語順の巧さに惹かれる歌です。忙しさはわかっているけど「夕陽をみないか」という呼びかけをしている、もしかしたらせざる…

塔2017年2月号 3

作品2は多いので2回に分けます。 るるるると振れるブランコ掴まえて地にすれすれの空を漕ぎ出す 竹田 伊波礼 P71 「るるるると振れる」が面白い表現です。さっきまで誰かがのっていて、まだ振動を伝えるブランコでしょう。「地にすれすれの空」で空間に広が…

塔2017年2月号 2

作品1からいつくか。 たくさんの滴ふるえて流れゆく車窓は遠い額縁である 芦田 美香 P26 雨天のときに電車に乗っていると車窓をたくさんの滴が流れていきます。かなりのスピードなのでけっこう激しい動きになることもあります。「車窓は遠い額縁である」とい…

塔2017年2月号 1

さて、しばらく忙しくしていたので更新止まっていました。先日の旧月歌会のあとには美味しいシュークリームを食べていました。なんとか塔の評を続けましょう。 もうすぐ私は死ぬと言いしか唇のうごきが見えてアレッポの声 吉川 宏志 P2 シリア内戦で反体制派…

塔2017年1月号 5

天敵のない生きものにある自殺 アクアリウムに揺れる水草 加瀬 はる P170 「天敵のない生きもの」とは人間のことでしょう。文明をつくり、他の生物から脅かされることが減ったけれど自ら命を絶つこともある人間。水槽のなかでゆっくり揺れている水草の頼りな…

塔2017年1月号 4

逸らさずにひとを見つめる眸、それは古き写真にしずもれる井戸 *眸=め 中田明子 P118 写真を見ているシーンかな、と思いました。写真の中に写っている人は逸らさずにこちらを見てくる。あるいは本当に目の前にいる誰かの視線のことかもしれない。まっすぐ…

塔2017年1月号 3

春光は明朝体と思うとき文字で溢れる僕たちの庭 千種 創一 P78 おだやかな春光のまばゆさを「明朝体」という折り目正しい印象の書体としてとらえる感覚が面白い一首です。たしかに初々しい感じは「明朝体」かもしれない。ゴシック体とかポップな書体だと合わ…

塔2017年1月号 2

ゴキブリの平たい家を組み立てる、足ふきマットを貼る位置がある 相原 かろ P28 ゴキブリホイホイのことでしょうけど、「平たい家」という表現がなんだかおかしい。「足ふきマット」で足を拭いたが最後なんだけどよく考えると面白い発想のアイテムですよね。…

塔2017年1月号 1

月集から。今回から表紙が変わったのです。配色が渋めで素敵。 高麗黍阿蘭陀大麦なかんづく唐唐土のはるかなるかな *高麗黍=かうらいきび 阿蘭陀大麦=うらんだふいん 唐唐土=たうもろこし 真中 朋久 P7 今回の真中さんの詠草は読者の知識を刺激する一連…

塔2016年12月号 5

若葉集。やっと終わるよー・・・。もう塔1月号が届いたよー。 カーテンの隙より入りし月光を浴びたる肩より露草となる 水野 直美 189 とても幻想的で美しい一首です。「肩より露草となる」という描写で神話みたいな美しさがあります。肩というパーツの丸みと…

塔2016年12月号 4

塔12月号 作品2から。こちらは後半。 したような気がするこんな口づけをパックの牛乳流し込むとき 太田 愛 143 初句の大胆な入りかたがとても印象的な歌です。どう続くのかな、と思って読んでいくと、「こんな口づけをパックの牛乳流し込むとき」ときます。…

塔2016年12月号 3

塔12月号 作品2から。まず前半。 廃校の名を遺したる停留所二つありたり町に入るまで 富田 小夜子 P100 バスに乗っていて、町にたどり着くまでの間に「廃校の名を遺したる停留所」が二つある、という描写は淡々としていますが、現在の少子化の一面を端的に切…

塔2016年12月号 2

作品1から取り上げます。 しっぽまで餡の入った鯛焼きのようなる人の自慢のしっぽ 白水 麻衣 P34 「しっぽまで餡の入った鯛焼き」は嬉しいけど他人の自慢話はあんまり楽しくない。きっと話相手はとても自慢話が好きな人なのだろう、と思いました。ちょっと皮…

塔2016年12月号 1

なんとか続けましょう。塔2016年12月号からいいな、と思った歌を取り上げます。 今回は月集から。 一生のその殆どが幼年期なること羨し蟬声を聞く 山下 洋 蝉の一生がはかないものであることはよくいろんな作品のモチーフになっていますが、「幼年期」への着…

塔2016年11月号から 11

11月号の紹介、終わったなーとか思っていたら月集をとばしていますね。いや、別にわざとじゃなくて思いつきで新樹集から始めた都合、次のページに進んでいっただけです・・・・。 ネクタイをまた締めてゆく秋となり小鮎のような銀で挟めり 吉川 宏志 P2 たし…

塔2016年11月号から 10

塔2016年11月号の若葉集・山下洋選歌欄から。 遠いところは遠くにあったあの頃の茶の間のテレビに奥行きがあり 竹田伊波礼 P195 「茶の間のテレビ」はもうレトロなアイテムになりましたね。今から考えると不格好なほどの奥行きがありました。当時よりも情報…

塔2016年11月号から 9

塔2016年11月号の作品2・三井修選歌欄から。 むらさきの淡き桔梗の花びらにむらさきの濃き筋目あり、雨 清水 良郎 P172 一輪の桔梗のなかの紫の濃淡に着目している観察がとてもいい。結句の「、雨」も面白く桔梗の花びらを雨滴がつたっていく様子が浮かびま…

塔2016年11月号から 8

塔2016年11月号の作品2・小林幸子選歌欄から。 記憶とはむしろ細部のことばかりくびすじ蒼きひとでありたり 中田 明子 P157 毎回巧いのが中田さん。人間はどんどん忘れていく。記憶はまさに断片として残っていく。「くびすじ蒼きひと」はなんだか儚い印象を…

塔2016年11月号から 7

塔2016年11月号の作品2・永田淳選歌欄から。 塔という結社にいます、タワーの。と言いつつタワーを形づくる手 逢坂 みずき P145 なんだかおかしかった一首。所属している短歌結社のことを説明するのにどう説明しているのか、生き生きと描写しているのがいい…

塔2016年11月号から 6

塔2016年11月号の作品2・江戸雪選歌欄から。 モノクロの人ら行き交う五番線ホームの朱きポスト黙せり 岡村 圭子 P129 「モノクロの人ら」はたぶんスーツなどダークトーンの服装なんだろう。人がモノクロであるのに対して、ポストの色がやけに鮮やかで、物体…

塔2016年11月号から 5

塔2016年11月号の作品2・栗木京子選歌欄から。 きみが手にきつと触れしと図書館の茂吉の棚に今日も来てをり 広瀬 明子 P114 慕っているひとがおそらく読んだだろう本がある棚の前にまた来ている、一途なシーンだなと思います。ただ「きみが手にきつと触れし…

塔2016年11月号から 4

塔2016年11月号の作品2・花山多佳子選歌欄から。 梅ゼリーの梅に手つけず子供らは草履引っ掛け虫捕りに行く 矢澤 麻子 P99 夏休みの子供たちの様子を詠んだ歌が詠草のなかにありました。「梅に手つけず」という描写で食べ物の好みだけでなく、なんとなく性格…

塔2016年11月号から 3

塔2016年11月号の作品1・池本一郎選歌欄から。 ボートにも乗つたねカメラ忘れたね百年生きたといふやうに言ふ 大塚 洋子 P87 ゆったりした雰囲気がとても魅力的な一首です。遠い昔のデートを懐かしむような言い方だと思いました。「乗つたね」「忘れたね」と…

塔2016年11月号から 2

塔2016年11月号の作品1・永田和宏選歌欄から。数字はページ数です。 お互いの屋根裏部屋を少しずつ見せ合うように手紙を交わす 白水 麻衣 69 いままさに親しくなりつつある人でしょう。だんだんとお互いの内面を見せていく様子を「屋根裏部屋を少しずつ見せ…

塔2016年11月号から 1

塔を読みつつ、いいなと思った歌には○をつけていきます。(ダメだろ、って思った歌には×つけていきます) 合評が終わった後なんで塔のなかのいいな、と思う歌をどうしようかな、と思っています。試みに欄ごとに印象に残った歌を取り出していってみましょう。…

塔10月号の感想 その2

塔10月号で連載50回になる「中東通信」が終了しました。 中東在住の千種さんによるエッセイと短歌の連載でとても興味深い内容でした。 屋台のスイカが大きくて甘いこととか、床屋のおじさんとの会話とかちょっとした日常の断片から見えてくる景色がとても好…

塔10月号の感想 

久しぶりに塔の感想をあげておきましょう。 って10月号は2年に一度の「10代20代特集」・・・ 私が塔に入って2年経ったのね^_^; うーん、早い。 今回は合評をやっていて注目した方の短歌を取り上げてみましょう。 図書室の図鑑に眠る青い蝶狭い世界の中を生き…

塔の合評を終えて考えたこと

今年の7月から12月号まで、塔誌上の合評に参加していました。(実際に批評を書く範囲は5月号から10月号まで)塔に載っている作品をいくつか取り上げて、二者間で批評していくというスタイルで執筆しました。 まずは半年間、なんとか終わったぞ、っていう気分…