波と手紙

小田桐夕のブログ。好きな短歌について。

一首評

一首評「白」

白雲をおし上げてゐる白雲のかがやける白海をはなれつ 竹山広 「東京のこゑ」『一脚の椅子』 季節は夏かな…と思っています。海上に浮かんでいる雲にも位置の上下があって、おしあげていた下の雲が、海を離れたばかり。といった景色を想像します。 白雲のボリ…

一首評「風」

彼岸花あかく此岸に咲きゆくを風とは日々のほそき橋梁 内山晶太 「反芻」 『窓、その他』 ちょうどお彼岸の季節ですね。彼岸花の強い赤さは、私はけっこう好き。 この歌も彼岸のころの景ですが、彼岸は時期であると同時に、場所をも指しているのではないか、…

一首評「鏡」

三面に淡い雨降る三面鏡傘さすひとを映すことなし 小島なお「雨脚」『展開図』P57 三面鏡はたしか、実家のドレッサーで見たことがあったな・・・・。お化粧をする際に、三方向から確認できるので、色ムラがないか、仕上がりがきれいか、しっかり確認できます…

尾崎左永子『鎌倉もだぁん』から

ここしばらく、尾崎左永子さんの『鎌倉もだぁん』を読んでいました。 以前、三月書房で買った一冊です。(三月書房ももう一度くらい、行きたかったなぁ・・) 『鎌倉もだぁん』は、鎌倉での暮らしのなかで詠まれた作品群です。 春夏秋冬の鎌倉の風景や色や匂…

一首評「森」

やはらかな森の吐息に濡れながらほたるは一生ひかりつづける 杉本なお「ふくろふの森」

一首評「正解」

るるるると巻き取るパスタ 正解を知っていながらいつも間違う 松村正直 『紫のひと』「正解」P90

一首評 「自転車」

遠くから来る自転車をさがしてた 春の陽、瞳、まぶしい、どなた 東 直子「ハルノシモン」『青卵』 P183

一首評「ナイフ」

手紙たくさん書くさびしさを愛と呼ぶつがいのナイフ水に沈めて 東 直子「つがいのナイフ」『青卵』P20

一首評「漣」

漣はむかし清音なりしとかささなみささなみ夕陽を洗ふ 伊沢玲 『雲のすごろく』「ケトル」P73

一首評「感情」

感情の錆びゆく速度ねこじゃらしの頭に触れて留めておこう 小島なお「十円」 COCOON14号

一首評 「頬」

人の生に降る雨粒のかくまでに閑けく人の頬に走れる *生=よ 閑けく=しづけく 岡井隆 『宮殿』 P 157

一首評 「発見」

自暴自棄になりてようやくかがやけるこころなど春の発見として 内山晶太 『窓、その他』

一首評「赦す」

一首評

一首評「温室」

一首評

一首票「苺」

杉崎 恒夫 『食卓の音楽』から。

一首評 「係」

一首評

一首評 「春」

以前も読んだことがある歌集からすこし引いてみます。今回は真中朋久氏の『雨裂』から。以前読んだときより、じんわりした良さが分かる気がしました。

一首評「詩」

新年早々、風邪をひき、ずっと体調がよくなかったです・・・。 1月の投稿はこれだけ・・・。 塔1月号の評は下書きしているので、順にアップします。

一首評「椿」

一首評。江戸雪さんの『Door』から。

一首評 「秋」

一首評。澤辺元一氏の『晩夏行』から。

一首評「欲」

早さではなくて想いがほしいのだが 欲とは初夏の水に似ている 染野 太朗 「馬橋公園」 『人魚』 公園で野球少年を見ている一連のなかにある歌です。 なにかをほしい、と思う気持ちは誰の中にもあって、けっこう強烈なエネルギーになることがあります。 作中…

一首評 「危機」

うすいグラスにいつも危機はありいまは逢ふ前の君に救はれてゐる 林和清 「みちのくの黒い墓石」『去年マリエンバートで』 ブログを書く気がなくなってしまって、1ヵ月くらいほったらかしにしていました。 気が向いたときに、ときどき記事を更新してみます。…

一首評 「ドア」

回転ドアのむかうに春の街あれどほんたうにそこに出るのかどうか 小島ゆかり「谷戸町」 『馬上』(現代短歌社) P54 回転ドアってなんだか不思議なアイテムで、 区切られた円筒形のなかを回っていくという あえてやや面倒な仕組みになっています。 単なる1枚…

一首評 「鳥」

切手帖のくらやみのなかのうつくしき鳥たちいつせいに発火するごとし 真中 朋久 「火光」 『火光』P100 「火光」のなかでとても印象的だった歌です。最近、読み直していて、やっぱり印象深い。 美しさと怖さが同じ作品のなかにあることがしばしば、あります…

一首評 「ひかり」

教室はいやおうもなく春となり壁に押したる画鋲のひかり 大辻 隆弘(辻はしんにょう一つ)「蘇枋」『景徳鎮』 教室にとって春は特別な季節。 新入生が入ってきて、また新しい年度が始まる区切りです。 教師を長年やってきた作者にとっても 新しい1年のスター…

一首評 「木」

二月の陽しろくあかるし樹皮のなか木はみずからを閉じ込めて立つ 吉川 宏志 「冠羽」 『海雨』 まだ寒い二月、とはいえ冬の終わりを 感じ始める時期でもあります。 すこしやわらいだ陽が射す二月、 樹木の立つさまを 「木はみずからを閉じ込めて」という把握…

一首評 「あねもね」

抱かれず なにも抱かずねむりたり半島にあねもねの咲く夢 抱かれず=いだかれず 江戸 雪 『百合オイル』 ひとりで静かにねむる夜。 初句のあとにあえて一字空けていることで 断絶した感覚を感じます。 見ている夢の場所が 「半島」という大陸から飛び出すよう…

一首評 「間」

雨降れば雨の間に立つ花あざみ祖母の死後濃くなりしふるさと *間=ま 吉川 宏志 『海雨』 降っている雨のすじにも間があって、 その間に存在している花あざみ、という描きかたに惹かれます。 ふだんなにげなく見ている光景を あらためて言葉で描写して 定着…

一首評 「コード」

イヤフォーンのコードを指に解くときひとは敬虔の表情をせり 大辻 隆弘 「ナックル」 『景徳鎮』 イヤフォーンのコードのからまりは どこか植物の蔓を思わせるときがあります。 細いコードがからまっている状態を指にとり、 するっとほどく時、どこか祈りに…

一首評 「水」

思い通りに生きることなどできなくて誰もできなくて水を分け合う 松村正直「花火大会」 「星座」2017年初菊号 P8 結社誌「星座」を拝見する機会があり、その中から。 ・・・「星座」ってさ、結社誌っていうよりも どこかの短歌総合誌みたいな作りですね・・…